建築業界の最新ニュース:2024年上半期トレンドと注目ポイント

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建築業界は、技術革新、社会の変化、そして持続可能性への意識の高まりによって常に進化を続けています。2024年上半期も、新たなトレンドと注目すべき動向が数多く見られます。本稿では、建築士を目指す方、スキルアップを目指す方、キャリアに悩んでいる方、そして建築士を採用したい人事や経営者の皆様に向けて、最新ニュースをまとめました。

BIM:建築業界のデジタル化を加速

BIM(Building Information Modeling)は、建築設計から施工、維持管理まで、建築物のライフサイクル全体をデジタルデータで管理する技術です。2024年は、BIM活用がさらに加速する年になると予想されます。

国土交通省の「建築BIM加速化事業」

三谷産業とタカノ建設が共同で進める「タカノホーム石川支社新築工事プロジェクト」は、国土交通省「建築BIM加速化事業」の補助金交付が決定しました。これは、BIM活用による建築業界のデジタル化を促進するための政府の取り組みの一環です。

安藤ハザマの「Visual Check-Connect」

安藤ハザマは、ブラウザでBIMの設計指示やビジュアルチェックができるシステム「(仮称)Visual Check-Connect」を開発しました。これは、設計者とBIMオペレーター間のコミュニケーションを円滑化し、設計レビュー業務の効率化を図るためのものです。

NECのスリーブ管検査効率化技術

NECは、設計BIMを活用し、建築現場でのスリーブ管検査を大幅に効率化する技術を開発しました。スマートフォンやタブレットでスリーブ管を撮影するだけで、BIMデータと照合し、誤差を数秒で計測できる技術です。

福井コンピュータアーキテクトの「GLOOBE 2024」

福井コンピュータアーキテクトは、国産BIM建築設計・施工支援システム「GLOOBE」シリーズの最新版「GLOOBE 2024」をリリースしました。躯体計画/仮設計画機能を強化し、BIM活用のさらなる進化を促進しています。

オープンBIMとCDE

BIM活用が進む中で、建設ライフサイクル全体でステークホルダーをつなぎ、コミュニケーションやコラボレーションを可能にする「オープンBIM」と共通データ環境(CDE)が注目されています。

建築物の木造化/木質化:持続可能な社会への貢献

木材は、CO2を吸収する素材として注目されています。建築業界では、木造化/木質化が加速しており、環境負荷の低減に貢献しています。

飛島建設とナイスの合弁会社設立

飛島建設とナイスは、非住宅建築分野の木造/木質化の拡大を目指し、合弁会社「ウッドエンジニアリング」を設立しました。これは、木造建築の技術開発と普及を促進するための取り組みです。

国土交通省の「木造計画・設計基準及び同資料」改定

国土交通省は、公共建築物の木造化促進に向け、「木造計画・設計基準及び同資料」を改定しました。中層以上の建築物の木造化にも対応した合理的な設計手法などを追加しました。

住友林業の混構造建築用梁接合金物

住友林業は、木造の小梁をS造やRC造の大梁や柱と接合する混構造用金物を発売しました。設計業務を省力化し、低コスト化することで、中大規模木造建築の普及を促進します。

AQ Groupの「Re:Treeプロジェクト」

AQ Groupは、「普及型純木造ビル」で日本の街並みに木造建築物を復興する「Re:Treeプロジェクト」を始動しました。国内で普及している木材や構法を用い、木造ビルやマンション、商業ビルを展開し、SDGsを標ぼうする木造建築会社を目指します。

建築設計:デジタル技術を活用した進化

建築設計分野では、デジタル技術の導入が進み、設計業務の効率化と創造性を高める取り組みが進められています。

MDlabの「建物カルテ」

MDlabは、建築設計者向けWebサービス「建物カルテ」の先行リリース版を無償提供しています。建築設計業務の情報共有の円滑化と文書作成の効率化で、労働時間を削減できます。

ダイテックの「CADWe’ll Linx V5」

ダイテックは、建築設備業向けCADソフトウェアの最新バージョン「CADWe’ll Linx V5」をリリースしました。分電盤や動力盤のリストを表やExcelに出力する盤リストと、ピースNoやユニットNoを付加して配管加工帳票を作成する新機能を追加しました。

福井コンピュータアーキテクトとフォトラクションのクラウド型新サービス

福井コンピュータアーキテクトとフォトラクションは、3D建築設計システム「ARCHITREND ZERO」と施工管理アプリ「Photoruction」を連携した住宅関連事業者向けの新サービスを開発します。

大成建設の「AI設計部長」

大成建設の設計作業をAIでサポートする「AI設計部長」に、希望条件に合致した最適案を短時間で生成する新機能を追加しました。建築基準を考慮した建築可能範囲を算出し、複数建築パターンの概略設計案を自動生成します。

NOIZのコンピュテーショナルデザイン

大阪・関西万博で、テーマ事業プロデューサーの落合陽一氏が企画するパビリオン「null2」の設計を手掛ける「NOIZ」は、建築のフィジカル要素とコンピュテーショナルデザインなどのデジタル技術との融合で、新しい建築設計の可能性を模索しています。

省エネ性能表示制度:環境負荷低減への意識向上

2024年4月から、住宅・建築物の「省エネ性能表示制度」がスタートしました。建築物の省エネ性能の周知を目的に、エネルギー効率の高い建築を促進する取り組みです。

ZEB認証取得

大成建設は「大成建設グループ次世代技術研究所」の研究管理棟で、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)最高位の「5つ星」と『ZEB』認証を取得しました。

矢作建設工業のNearly ZEB認証取得

矢作建設工業は、東海大府工事事務所で建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のNearly ZEB認証を取得しました。建設現場で快適に働けるためのウェルネスに配慮した室内空間を実現します。

改修等部位ラベル

国土交通省では、既存建築物においても「省エネ性能表示制度」の適用拡大を目指し、2024年秋から「改修等部位ラベル」という新たな表示スキームの導入を開始します。

建築業界の働き方改革:人材不足解消への取り組み

建築業界では、人材不足が深刻化しており、働き方改革が重要な課題となっています。労働時間短縮や労働環境改善を進め、魅力的な職場環境を作るための取り組みが進められています。

オープンハウス・アーキテクトの時差出勤制度

オープンハウス・アーキテクトは、始業時間を朝6時まで前倒しできる「時差出勤」と、朝方勤務者に手当を支給する「朝活インセンティブ」の運用を開始しました。

東洋建設のAIを活用した能力評価システムとLMS

東洋建設は建築施工職員を対象に、AIを活用した「能力評価システム」と、場所や時間を選ばずに利用できる教育プラットフォーム「LMS」を導入しました。

建築と社会:多様なニーズに応える進化

建築は、単に建物を建てるだけでなく、人々の生活、文化、社会全体に影響を与える重要な要素です。

「江戸東京たてもの園」のWebアプリ

DNPは、「江戸東京たてもの園」に移築した歴史的建造物の鑑賞価値を高めるWebアプリケーションを公開しました。AR技術やGPS機能を用い、園内の建築物をより深く、楽しく、快適に体験できることをコンセプトにしています。

「東京建築祭」

東京の建築を見学できるイベント「東京建築祭」が開催されます。専門家などによるガイドツアーが予定されています。

「ダンボールハウスけんちくじむしょ」

子どもの好きなことや、やりたいことをヒアリングしてダンボールハウスを作ってくれるサービス「ダンボールハウスけんちくじむしょ」が開始されました。

「三井アウトレットパーク 岡崎」

三井不動産は、愛知県岡崎市にて開発中の「三井アウトレットパーク 岡崎」(仮称)の建築に着工しました。約170店舗が出店予定です。

「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY北館建替え計画」

三井不動産は、千葉県船橋市で推進中の「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY北館建替え計画」について、I期の建築に着工しました。開業は2025年秋を予定しています。

「イオンモール仙台雨宮」

イオンモールは、ショッピングモール「イオンモール仙台雨宮(仮称)」の建築工事に着手しました。

建築業界の未来:更なる進化と挑戦

建築業界は、技術革新、社会の変化、そして持続可能性への意識の高まりによって、更なる進化を遂げようとしています。

「建築情報学」

情報技術の発達と浸透による根源的な影響を踏まえ、「建築」という概念を情報学的視点から再構成することを目指す新たな建築領域の学問です。

3Dプリンティング

三井化学は郡家コンクリート工業と共同で、樹脂3Dプリンティング技術を活用し、意匠性の高いコンクリートを製造する技術を開発しました。

リファイニング建築

三井不動産は、毎日新聞の新聞販売店の建物を、賃貸住宅に再生しました。既存躯体の補修/補強を行い、建物の長寿命化を図りながら、建て替えと比較して工事費用とCO2排出量を低減します。

アップサイクル建築・まちづくり

リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点 アップサイクル都市モデル分科会は、駐日オランダ王国大使館で「日蘭アップサイクル建築・まちづくり展」を開催しました。

生成AI

ZISEDAIの建築プラン生成AIシステム「TASUKI TECH TOUCH&PLAN」は、新機能で天空率にも対応し、物件情報を生成AIに与えるだけで、条件の異なる複数の建築プランを作成できるようになりました。

Lib Workの3Dプリンタモデルハウス

Lib Workは、建設用3Dプリンタを活用した住宅「Lib Earth Hous “modelA”」を建築しました。自然由来で容易に入手できる土を主原料に採用しています。

建築知識2024年3月号

ミニチュア・ジオラマアーティストたちのノウハウが紹介されています。

建築設計×コンピュテーショナルデザイン

建築のフィジカル要素とコンピュテーショナルデザインなどのデジタル技術との融合で、新しい建築設計の可能性を模索しています。

まとめ

2024年上半期、建築業界は、BIM、木造化/木質化、デジタル技術、省エネ性能表示制度、働き方改革など、様々な分野で進化を続けています。建築士として活躍したい、スキルアップしたい、キャリアに悩んでいる、建築士を採用したいなど、それぞれの立場において、最新の情報に目を向け、変化に対応していくことが重要です。

建築業界の最新ニュース:注目すべきポイント

BIM:建築業界の未来を拓く

BIMは、建築物の設計、施工、維持管理など、ライフサイクル全体をデジタルデータで管理する技術です。2024年は、BIM活用が本格的に進展していく年になり、建築業界のデジタル化を加速させる役割を担うと予想されます。

注目ポイント

  • オープンBIMとCDE: BIMデータの共有を促進し、建設ライフサイクル全体でのコラボレーションを強化する取り組み。
  • BIM確認申請: BIMを活用した設計データの審査が義務化される動き。
  • クラウド型BIMサービス: 設計・施工・管理を統合するクラウド型サービスの普及。

建築物の木造化/木質化:環境と調和する建築

木材は、再生可能な資源であり、CO2を吸収する素材として注目されています。建築業界では、木造化/木質化が加速しており、環境負荷の低減に大きく貢献しています。

注目ポイント

  • 高層木造建築: 木材の強度や耐火性を向上させる技術の開発により、高層木造建築が実現可能になる可能性。
  • CLT (Cross Laminated Timber): 多層構造の木材パネルで、建築のスピードと効率性を向上させる技術。
  • 木質系建材: 木材を原料とした様々な建材の開発と普及。

建築設計:デジタル技術によるイノベーション

建築設計分野では、デジタル技術の導入が進み、設計業務の効率化と創造性を高める取り組みが進められています。

注目ポイント

  • AIによる設計支援: 建築設計を効率化するAIツールやシステムの開発。
  • VR/ARを活用した設計可視化: 建築物を仮想空間で体験できる技術の導入。
  • パラメトリックデザイン: パラメータを設定することで、複雑な形状を自動生成する設計手法。

省エネ性能表示制度:環境配慮型の建築を促進

2024年4月から、住宅・建築物の「省エネ性能表示制度」がスタートしました。建築物の省エネ性能を可視化し、エネルギー効率の高い建築を促進する取り組みです。

注目ポイント

  • ZEB (Zero Energy Building): 消費エネルギーをゼロにすることを目指す建築。
  • 再生可能エネルギー: 太陽光発電や地熱発電などの再生可能エネルギー導入の促進。
  • 高断熱・高気密化: 熱損失を抑えるための断熱材や気密材の活用。

建築業界の働き方改革:人材不足解消と魅力的な職場環境

建築業界では、人材不足が深刻化しており、働き方改革が重要な課題となっています。長時間労働の解消や労働環境の改善など、魅力的な職場環境を作るための取り組みが進められています。

注目ポイント

  • 時間外労働の削減: 労働時間の管理と残業時間の削減。
  • フレックスタイム制・リモートワーク: 柔軟な働き方を導入する企業が増加。
  • 人材育成: 若手社員の育成やスキルアップを支援するプログラムの充実。

建築業界の未来:更なる進化と挑戦

建築業界は、技術革新、社会の変化、そして持続可能性への意識の高まりによって、更なる進化と挑戦を続けていくでしょう。

注目ポイント

  • スマートシティ: 都市全体のインフラやサービスをデジタル技術で連携させる取り組み。
  • サステナビリティ: 環境負荷の低減、資源の循環利用、持続可能な社会への貢献。
  • 建築とテクノロジーの融合: AI、IoT、ロボット技術など、テクノロジーを活用した建築の進化。

建築業界は、人々の暮らしを支える重要な役割を担っています。最新の動向に目を向け、変化に対応することで、より良い未来を創造していくことが期待されます。

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