銀行の持続可能性:顧客と未来を繋ぐサステナブルファイナンス

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

銀行は、社会の経済活動を支える重要な役割を担っています。近年、その役割は、単に資金を融通するだけでなく、社会全体を持続可能な方向へ導くことにも求められています。

特に、気候変動や社会課題といった地球規模の課題は、銀行にとっても無視できない問題であり、持続可能な社会の実現に向けて積極的に貢献していくことが求められています。

目次

1. サステナブルファイナンスを巡る他行の動向

近年、多くの金融機関が、サステナビリティを重視したビジネスモデルへと転換を図っています。特に、環境問題への対応として、脱炭素化を目標に掲げ、再生可能エネルギーや省エネルギー関連の事業への投資を積極的に行っています。

(1) 主要3行のサスティナビリティ目標 ~脱炭素関係を中心に~

三菱UFJフィナンシャル・グループは、2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げ、グリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローンなどのサステナブルファイナンス商品を積極的に提供しています。

三井住友フィナンシャルグループは、2050年までに運用資産における温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げ、環境負荷の低い事業への投資を強化しています。

みずほフィナンシャルグループは、2050年までに融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量をネットゼロにする目標を掲げ、脱炭素化を促進する企業への融資を積極的に行っています。

(2) 金利優遇のあるSDGs/脱炭素融資 ~地域金融機関の取扱商品の一例~

地域金融機関も、脱炭素化を支援する融資商品を提供しています。例えば、再生可能エネルギー発電事業や省エネ設備導入事業に対して、金利優遇などの支援を行うケースがあります。

(3) サステナブルファイナンスの代表格

サステナブルファイナンスには、以下の様な様々な商品・サービスがあります。

  • SDGs私募債: SDGs達成に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券。
  • サステナビリティボンド: 環境・社会問題の解決に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券。
  • グリーンボンド: 環境問題の解決に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券。
  • グリーンローン: 環境問題の解決に貢献する事業に対して融資を行うローン。
  • サステナビリティ・リンク・ローン: 企業のサステナビリティパフォーマンスと金利を連動させたローン。
  • ポジティブ・インパクト・ファイナンス: 社会課題の解決に貢献する事業に対して投資を行う投資ファンド。

(4) 顧客(企業)にとってのメリット・デメリット ~サステナブルファイナンスの費用対効果~

① 顧客(企業)にとってのデメリット

  • コスト増加: 環境配慮型製品や技術の導入、サステナビリティに関する情報開示など、追加のコストが発生することがあります。
  • 競争力低下: サステナビリティへの取り組みが競争上の不利になる可能性があります。
  • リスク増加: 新技術導入に伴うリスク、サステナビリティに関するコンプライアンス違反のリスクなどがあります。

② 顧客(企業)にとってのメリット

  • 収益増加: 環境配慮型製品やサービスに対する需要拡大、省エネによるコスト削減など、収益増加に繋がる可能性があります。
  • 競争力強化: サステナビリティへの取り組みは、企業イメージ向上、顧客からの信頼獲得など、競争力強化に繋がる可能性があります。
  • リスク軽減: 気候変動リスクや社会課題リスクなどの軽減に貢献します。

2. 顧客がSDGsと混同する類似キーワード

顧客は、SDGsと似た言葉の概念を混同している場合があります。銀行員は、顧客との対話の中で、これらの言葉の違いを理解してもらうことが重要です。

(1) ESG

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、企業の持続可能性を評価するための指標です。

  • 環境(E): 気候変動への対応、資源の効率的な利用、廃棄物削減など
  • 社会(S): 人権、労働条件、消費者保護、地域社会への貢献など
  • ガバナンス(G): 企業統治、透明性、コンプライアンスなど

(2) CSR (企業の社会的責任)

CSRは、企業が社会の一員としての責任を果たすことを指します。

  • 従業員の安全確保
  • 環境保護
  • 地域社会への貢献
  • 倫理的なビジネス慣行の遵守

(3) CSV (共通価値の創造)

CSVは、企業が社会課題を解決することで自社の利益も同時に得られる考え方です。

  • 社会課題をビジネスチャンスに変える
  • 社会と企業が共に発展する

(4) 近江商人の『三方よし』

近江商人の「三方よし」は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の精神で、顧客、従業員、地域社会の三者にとって良い結果を生み出すことを目指す考え方です。

(5) 渋沢栄一の『論語と算盤』

渋沢栄一の「論語と算盤」は、倫理と経済を両立させる考え方で、社会貢献と企業利益の両立を重要視する考え方です。

(6) 稲盛和夫の『利他の心』

稲盛和夫の「利他の心」は、自分だけでなく、周りの人々のためにも行動することの大切さを説く考え方です。顧客や社会全体のために貢献する姿勢は、サステナビリティにも通じる考え方です。

3. 同業他社事例のまとめサイト ~SDGs・脱炭素関係~

顧客に対して、自社の取り組みをアピールしたり、他社の事例を紹介したりする際に、同業他社事例をまとめたサイトは役立ちます。

(1) 同業他社事例まとめサイト ~SDGs関係~

(2) 同業他社事例まとめサイト ~脱炭素関係~

4. 顧客がSDGs経営の実装に使えるガイドライン

顧客がSDGs経営を導入する際に、参考にできるガイドラインを紹介します。

(1) SDG コンパス ~SDGs経営の導入指南書~

SDGsコンパスは、経済産業省が提供する、企業がSDGs経営を導入するためのガイドラインです。経営戦略との整合性、ステークホルダーとの対話、目標設定と進捗管理、情報開示などのステップについて解説しています。

(2) その他のガイドライン

5. 顧客が差別化に使える認証制度

顧客が自社のサステナビリティをアピールするために、活用できる認証制度を紹介します。

(1) SDGsにも関連する主な認証制度一覧

(2) 主な認証制度 ~フェアトレード~

(3) 主な認証制度 ~水産物・海洋資源など~

(4) 主な認証制度 ~農産物・加工食品・紙製品など~

6. 顧客の予算枠を拡大できる補助金・助成金 ~SDGs・脱炭素関係~

顧客がSDGsや脱炭素関連の事業に取り組む際に、活用できる補助金・助成金を紹介します。

(1) 主な補助金・助成金 ~脱炭素関係~

(2) 主な補助金・助成金 ~SDGs関係~

(3) SDGsが有利に働く補助金

7. 顧客が税金を軽減できる優遇税制 ~SDGs・脱炭素関係~

顧客がSDGsや脱炭素関連の事業に取り組む際に、活用できる優遇税制を紹介します。

(1) 主な税制優遇(税額控除)措置の一覧 ~SDGsカーボンニュートラル関係~

(2) カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 ~最大0.2%の利子補給制度も~

(3) その他の優遇税制

8. 主なサステナブルファイナンスの内容と市場規模

サステナブルファイナンスは、急速に拡大している市場です。銀行員は、顧客に対して、適切なサステナブルファイナンス商品を紹介できるよう、市場動向を把握しておく必要があります。

(1) SDGs私募債とは

① SDGs私募債の定義

SDGs私募債は、SDGs達成に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券です。

② SDGs私募債を発行する地域金融機関の例

(2) サステナビリティボンドとは

① サステナビリティボンドの定義

サステナビリティボンドは、環境・社会問題の解決に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券です。

② サステナビリティボンドの発行総額の推移(国内企業等)

(3) グリーンボンドとは

① グリーンボンドの定義

グリーンボンドは、環境問題の解決に貢献する事業に資金を調達するために発行される債券です。

② グリーンボンドの発行総額の推移

③ グリーンボンドの事例 (国内)

(4) グリーンローンとは

① グリーンローンの定義

グリーンローンは、環境問題の解決に貢献する事業に対して融資を行うローンです。

② グリーンローンの発行総額の推移(国内)

③ グリーンローンの事例 (国内)

(5) サステナビリティ・リンク・ローンとは

① サステナビリティ・リンク・ローンの定義

サステナビリティ・リンク・ローンは、企業のサステナビリティパフォーマンスと金利を連動させたローンです。

② サステナビリティ・リンク・ローンの組成総額の推移(国内)

③ サステナビリティ・リンク・ローンの組成主体の例

(6) ポジティブ・インパクト・ファイナンスとは

① ポジティブ・インパクト・ファイナンスの定義

ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、社会課題の解決に貢献する事業に対して投資を行う投資ファンドです。

② ポジティブ・インパクト・ファイナンスの組成主体の例

(7) その他のSDGs/ESG金融 ~日本銀行より~

9. サステナブルファイナンスを取り巻く金融業界の動向

サステナブルファイナンスは、金融業界全体で注目されている重要なテーマです。銀行員は、金融業界の動向を理解し、顧客に対して適切なアドバイスを提供できるよう、常に最新の情報を収集する必要があります。

(1) 主要中央銀行の「気候変動」に対するスタンス ~日本銀行の取り組みとは~

① 世界の動向

  • 英イングランド銀行: 気候変動リスクを金融システムの安定性に及ぼす影響を分析し、金融機関に対して気候変動リスク管理の強化を求めています。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB): 気候変動リスクに関する情報開示を強化し、金融機関が気候変動リスクを適切に管理するよう促しています。
  • 欧州中央銀行(ECB): 気候変動リスクを金融安定リスクとして認識し、金融機関に対して気候変動リスク管理の強化を求めています。

② 日本銀行の「気候変動」に対するスタンス ~金利0%でのバックファイナンス~

日本銀行は、気候変動問題への対応を金融システムの安定性に重要な課題として認識し、金融機関に対して気候変動リスク管理の強化を促しています。また、グリーンボンド等のサステナブルファイナンス市場の活性化に貢献するため、金融機関向けのバックファイナンス(再融資)を実施しています。

(2) 日本政府がSDGs/脱炭素を推し進める背景

① 日本政府がSDGsを推し進める背景

日本政府は、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を達成するために、様々な政策を推進しています。

② 日本政府が脱炭素(カーボンニュートラル)を推し進める背景 ~グリーン成長戦略~

日本政府は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現を目指し、グリーン成長戦略を策定しています。

③ グリーンファイナンスに係る金融庁の動向

金融庁は、グリーンファイナンスを促進するために、金融機関に対して気候変動リスク管理や情報開示の強化を求めています。

(3) 注視したい物言う株主の存在 ~気候変動問題に関するアクティビスト化~

近年、ESG投資家の間では、気候変動問題に対する企業の取り組みを重視する傾向が強まっており、企業に対してより積極的な姿勢で行動を求める「物言う株主」が増加しています。

10. そもそもSDGsとは

(1) SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のことで、2015年に国連で採択された、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットで構成されています。

(2) SDGsの「17の目標」と「169のターゲット」とは

国連広報センター:SDGs

11. そもそも脱炭素(カーボンニュートラル)とは

(1) 脱炭素(カーボンニュートラル)とは

脱炭素(カーボンニュートラル)とは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることを目指す取り組みです。

(2) 政府がカーボンニュートラルを推し進める背景

日本政府は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、脱炭素化に向けた様々な政策を推進しています。

(3) グリーン成長戦略とは

グリーン成長戦略は、脱炭素化と経済成長を両立させるための政府の戦略です。

12. そもそも事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、企業が事業再構築を行い、新たな事業分野への参入や既存事業の高度化を促進するために、経済産業省が交付する補助金です。

銀行員向け情報

  • サステナブルファイナンスの動向: 主要3行のサスティナビリティ目標、金利優遇のあるSDGs/脱炭素融資、サステナブルファイナンスの代表格(SDGs私募債、サステナビリティボンド、グリーンボンド、グリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローン、ポジティブ・インパクト・ファイナンス)、市場規模
  • 顧客のSDGs/脱炭素経営支援: 顧客がSDGs経営の実装に使えるガイドライン、顧客が差別化に使える認証制度、顧客の予算枠を拡大できる補助金・助成金、顧客が税金を軽減できる優遇税制
  • 金融業界の動向: 主要中央銀行の「気候変動」に対するスタンス、日本政府がSDGs/脱炭素を推し進める背景、物言う株主の存在
  • その他: SDGsの定義、17の目標と169のターゲット、脱炭素(カーボンニュートラル)の定義、グリーン成長戦略

記事要約

本記事は、金融機関の銀行員向けに、顧客との対話に役立つSDGs・脱炭素の情報を提供しています。

記事では、サステナブルファイナンスの動向、顧客のSDGs/脱炭素経営支援、金融業界の動向、SDGs/脱炭素に関する基礎知識を解説しています。銀行員が顧客に対してSDGsや脱炭素に関する情報を提供する際に役立つ内容となっています。

具体的には、主要銀行の取り組み、金利優遇ローン、SDGs私募債、サステナビリティボンド、グリーンボンド、グリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローン、ポジティブ・インパクト・ファイナンスなどの金融商品を紹介しています。

また、顧客のSDGs経営の実装に役立つガイドラインや認証制度、予算枠を拡大できる補助金・助成金、税金を軽減できる優遇税制についても解説しています。

さらに、金融業界を取り巻く環境の変化として、主要中央銀行の「気候変動」に対するスタンス、日本政府がSDGs/脱炭素を推し進める背景、物言う株主の存在についても触れられています。

記事は、銀行員が顧客との対話の中でSDGs・脱炭素に関する情報を効果的に提供するのに役立つ内容となっています。

スポンサーリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。