介護職は、利用者の生活を支え、笑顔を見ることが大きな喜びです。しかし、その一方で、利用者の苦しみや悲しみに寄り添う中で、心身に疲労が蓄積してしまうことも少なくありません。それが、近年注目されている「共感疲労」です。
共感疲労は、介護職特有のストレスといえます。利用者の状況や気持ちに深く共感し、自分のことのように考えてしまうことで、心身に負担がかかり、様々な症状を引き起こす可能性があります。
この記事では、介護職における共感疲労の症状、原因、予防策について解説します。共感疲労に悩んでいる方、これから介護職を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護職の共感疲労とは?その症状と原因
共感疲労の症状
共感疲労は、様々な症状で現れます。以下に、代表的な症状を挙げます。
- 身体的な症状
- 睡眠障害:夜に眠れず、疲れが取れない
- 食欲不振:食事の量が減ったり、味が感じられなくなる
- 身体の痛み:頭痛、肩こり、腰痛など
- めまい、吐き気
- 疲れやすい
- 精神的な症状
- 抑うつ状態:気分が沈み、やる気が出ない
- 焦燥感:落ち着きがなく、イライラする
- 無気力:何もする気が起きない
- 孤独感:周囲の人から孤立しているように感じる
- 悲観的な考え方:未来に対して希望が持てない
- 感情の麻痺:喜びや悲しみを感じにくくなる
- 仕事への意欲の低下:仕事に価値を感じられなくなる
- 人間関係のトラブル:周囲の人との関係が悪化する
- 自己嫌悪:自分の存在価値を感じられなくなる
これらの症状は、すべての人が経験するわけではありません。また、症状の出方は人によって異なります。
共感疲労の原因
共感疲労は、介護職の仕事内容と密接に関係しています。介護職は、利用者の生活全般を支援する仕事であり、利用者の様々な状況や感情に深く関わるため、共感疲労のリスクが高いといえます。
共感疲労を引き起こしやすい要因として、以下のものが挙げられます。
- 利用者の苦しみや悲しみに深く共感してしまう
- 利用者の状況や気持ちに深く入り込み、自分のことのように考えてしまうことで、心身に負担がかかります。
- 利用者の期待に応えようと、自分を追い詰めてしまう
- 利用者から「助けてほしい」という強い期待を感じ、その期待に応えようと努力しすぎることで、心身に負担がかかります。
- 自分の感情を抑え込み、利用者の気持ちに寄り添おうとする
- 自分の感情を抑え込み、常に利用者の気持ちに寄り添おうとすることで、ストレスが蓄積し、共感疲労に繋がります。
- 仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、常に仕事のことを考えてしまう
- 仕事中に利用者のことを考えてしまい、プライベートの時間でもリラックスできず、心身に負担がかかります。
- 周囲のサポートが不足している
- 周囲のサポートが不足し、一人で抱え込みがちになると、心身に負担がかかりやすくなります。
共感疲労の予防策
共感疲労は、放置すると心身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。早期に予防策を講じることが大切です。
1. 自分の感情に気づく
共感疲労を予防するためには、まず自分の感情に気づくことが重要です。
- 自分の感情を客観的に観察する
- 自分の感情を言葉で表現してみる
- 日記をつけ、日々の感情を記録する
- 感情に名前をつける
- 漠然とした不安やモヤモヤとした気持ちに、具体的な名前をつけることで、感情を理解することができます。
- 感情を受け入れる
- 自分の感情を否定したり、抑えつけたりせず、ありのままを受け入れることが大切です。
2. 利用者との距離感を意識する
利用者との距離感を意識することも大切です。
- 適切な距離感を保つ
- 利用者の気持ちに寄り添うことは重要ですが、常に利用者の気持ちに同調する必要はありません。
- 自分の感情と利用者の感情を区別することが大切です。
- 利用者との関係性を客観的に見直す
- 利用者との関係性について、定期的に振り返り、適切な距離感を保てているかを確認しましょう。
- 利用者との境界線を明確にする
- 仕事の時間とプライベートの時間、仕事の役割と私的な役割を明確にすることで、利用者との関係性を客観的に見ることができます。
3. 自己肯定感を高める
自己肯定感を高めることも、共感疲労の予防に役立ちます。
- 自分の価値観を大切にする
- 自分の価値観や考え方を否定せず、大切にすることが大切です。
- 自分の強みや長所を認識する
- 自分の強みや長所を認識し、自信を持つようにしましょう。
- 自分にご褒美を与える
- 仕事で頑張った自分にご褒美を与えることで、自己肯定感を高めることができます。
4. リフレッシュをする
定期的にリフレッシュをすることも重要です。
- 休日は仕事のことを忘れ、リラックスする
- 趣味や旅行など、仕事とは全く異なることをして、心身のリフレッシュを図りましょう。
- 睡眠時間を確保する
- 睡眠不足は、心身に負担をかけ、共感疲労を悪化させる可能性があります。
- バランスの良い食事を心がける
- 食生活の乱れも、心身に悪影響を及ぼします。
- 適度な運動をする
- 運動はストレス解消に効果的です。
- 気分転換をする
- 気分転換になるような音楽を聴いたり、散歩に出かけたりしましょう。
- 友人や家族と話す
- 悩みやストレスを誰かに話すことで、気持ちが楽になることがあります。
5. 周囲に助けを求める
一人で抱え込まず、周囲に助けを求めることも大切です。
- 同僚や上司に相談する
- 仕事で困っていることや、心身の疲れを同僚や上司に相談しましょう。
- 専門機関に相談する
- 精神的なストレスが強い場合は、専門機関に相談することをおすすめします。
まとめ
介護職は、利用者の生活を支えるやりがいのある仕事ですが、同時に、共感疲労のリスクも高い仕事です。共感疲労は、放置すると心身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
共感疲労を予防するためには、自分の感情に気づく、利用者との距離感を意識する、自己肯定感を高める、リフレッシュをする、周囲に助けを求めるなどの対策を講じることが大切です。
共感疲労に悩んでいる方は、一人で抱え込まずに、周囲に相談したり、専門機関に助けを求めたりしましょう。