スタートアップにおける競合分析手法について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
         

前回競合調査に便利なCrunchBaseというツールについて説明しました。

しかしツールを知っていても実際何を調べればいいの?という方に向けて、競合分析を始めるときにどんな手段でどんな観点で勧めていけばいいのかについて紹介します。

情報ソースは何がある?

会社のPR、ブログ、リリース情報を漁る

自社ブログやソーシャルメディア、ニュースリリースなどから何を発信しているのか?何を目指しているのかについて推測することができます。

ブログをやっているのなら、過去から直近の投稿全てに目を通しておきたいところです。もし量が膨大でそこまで時間を割けない場合は、せめてCEOやビジョンに関する投稿はチェックしましょう。その会社の戦略やビジョンを知るためにとても有益な情報ソースです。

また、資金調達やニュースリリースの情報からその会社が今どのステージにいて(調達フェーズなのか拡大フェーズなのか)、これからどこに向かって進んでいくのかを推測することができます。

ソーシャルメディアをフォローする

調査対象が海外企業なら必ずLinkedInのページはチェックしましょう。その会社を構成する組織や、どのようなバックグラウンドを持つのかについて知ることができます。

また、あらゆるソーシャルアカウントを漁りましょう。Twitter、Facebook、Instagramなど、まともな会社なら必ず公式アカウントを運用しているはずです。直近のイベントや体外活動などから、その会社がどの程度活発に運営されているのかがわかります。それらの情報からその会社のマーケティング戦略が見えてきます。

余力があれば、その会社のCEOやCTOについてもチェックしてみてください。ボードメンバーの発信内容はその会社の状況を知るための重要なソースになります。

イベント系をチェックする

イベント系の活動をチェックするとその会社のサービスやプロダクトについて深く理解できる可能性があります。例えば、カンファレンスなどにブースを出展しているのであれば、かなり細かくプロダクトについて説明してもらえるでしょうし、どんなパートナーを探しているのかについてももしかしたら聞き出せるかもしれません。技術系の話が聞きたければ、開発者をつかまえることができればラッキーです。

またはTechCrunchなどのスタートアップイベントに参加していれば、講演やプレゼンを見ることでそのサービスやビジネス上の優位性について理解することができます。

コミュニティを観察する

これはちょっと特殊ですが、その会社をもっと深く理解するためには彼らの顧客について観察することが重要です。例えば、彼らの顧客は提供されるサービスのどこが気に入ってお金を払っているのか?またどのような不満を抱いているのか?
そのサービスを利用している人が身近にいれば、直接ヒアリングしてみてください。もしいなければ、Twitterで検索してみるとか他の方法を探す必要があります。

そのコミュニティの熱量が高く好意的であれば自社にとって不利と言えますが、もし彼らのサービスに不満や課題を抱えているならば、自社にとってチャンスが眠っているかもしれません。

もう一歩踏み込んだ調査

プロダクトの機能/ビジネスモデルを分解する

競合他社が提供しているプロダクトの機能について書き出してみます。誰がいつ使うものなのか?誰がお金を払うのか?無数に選択肢がある中で、そのチームが考え抜いた結論があるはずです。

同様にビジネスモデルを詳細に理解することは重要です。なぜその値段で提供できるのか。

機能は表に出ているのである程度調べることはできますが、ビジネス観点の調査はネットを検索しているだけでは中々難しいです。そういう場合はCrunchBaseなどの外部サービスの利用を検討してみてください。

販売経路(Sales Funnel)を把握する

そのプロダクトないしはサービスの販売経路について把握していることも重要です。ダイレクトセールスなのか、バイラル・ソーシャルメディア系なのか、なぜそうである必要があるのか。

競合の販売経路は高い確率で自社でも検討する必要があります。競争するとなったときにどう戦うのか戦略を練る必要があります。

採用戦略をみて組織を解剖する

どのような職種を積極的に採用しているのかが分かれば、会社の組織的な方向性が見えてきます。

エンジニア1つとっても、プロダクト寄りなのか、AIやビッグデータ系のR&Dに力を入れていこうとしているのかが分かりますし、セールスの採用をみればどのマーケットに進出しようとしているのかがわかります。

採用戦略はその会社の未来の組織図を映し出すものです。

資金調達戦略(Equity Strategy)

シードなのかアーリーなのか、どのステージでいくら調達したのかが分かればその会社の成長スピードが予測できます。さらにお金の使い方にも注目してみましょう。

他にも、誰がどのステージでいくら調達しているのか?ファウンダーは誰で、リードインベスターはどこなのか。会社の経営状況を推測することで市場における近い将来のポジションが見えてきます。

フレームワークを使ってみよう

とはいえ、様々な分析をバラバラにやっても整理するのが大変だし、またチームでの共有が難しいので、最初のうちは決めたフレームワークに沿って進めるのが一番簡単と思います。

競合分析のフレームワークで決まったものはありませんが、最近使って中々良かったものを1つご紹介します。

自社を中心に直接的な競合企業、そして間接的な企業と比較をしていきます。

行には比較する項目が挙げられています。簡単に説明していきます。

  • Overview & Profile

    まずはワンライナーで自社そして他社の会社もしくはやっていることを書いていきましょう。

  • Product & Service

    ここは具体的に提供しているサービスやプロダクトについて調べていきます。具体的であればあるほど良いです。

  • Competitive Advantage

    俯瞰してみたときに、その企業のマーケットにおける競合優位性について考えていきます。

  • Distribution Channels

    次は販売チャネルについてです。口コミなのかダイレクトセールスなのか。各社の販売経路について整理します。

  • Marketing Strategy

    上の販売経路と混合しやすい部分ですが、こちらはマーケティング全般の戦略について比較していきます。

  • Business Model(Pricing & Cost)

    何を(What)、誰に(Who)、いくら(How much)で提供しているのかを比較することで、各社に共通する部分と異なる部分が明確になります。

  • Target Market

    ターゲット市場はどこなのか?ニッチなのかマスなのか。進出しようとしている市場にはすで代替手段が存在するのか。だとしたらそれは誰か。

    業界の構造的に参入障壁は高いのか、低いのか。ディスラプトしやすい市場なのか、それとも時間がかかるのか、などを考えつつ各社のターゲット市場を調査してみてください。

  • Main Metrics

    正直これが一番難しいと思います。これはそのビジネスの最重要指標は何かを定義することです。

    市場シェアなのか、ユーザ数なのか、はたまたアプリのダウンロード数なのか。そのビジネスの成長スピードを定義する一番の数字を明らかにします。

    例えば、Facebookは創業当初から売上は立っていませんでした。彼らの成長指標はユーザ数だったからです。

    そのビジネスの特徴を深く理解した上で、測定可能な数字を検討する必要があります。

最後に

ビジネス系のブログや書籍を漁るとたくさんフレームワークが出てきます。

今回紹介したフレームワークも、全てを網羅的に埋めるのではなく、あくまで自社サービスとマーケットの位置づけを客観的に見るための道具だと思ってください。

あまりちゃんとやろうとしてリソースを割いてしまう方が勿体無いので。

フレームワークを使うとチーム内のディスカッションがスマートに出来るというメリットもあるので、ぜひ自社に合った競合分析の方法を探してみてください。

それでは。

 

スポンサーリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。