人事部門がダイバーシティとインクルージョンに取り組むことの重要性が高まっている。多様性を受け入れ、すべての人が自分らしく活躍できる環境を築くことは、企業にとって競争優位性を生み出し、持続的な成長を促進する。本記事では、人事部門におけるダイバーシティとインクルージョンの概念、具体的な取り組み、そして成功事例を紹介する。
目次
人事部門におけるダイバーシティとインクルージョンとは
ダイバーシティとインクルージョンは、企業の成長と競争力強化に不可欠な要素であり、人事部門においても重要な役割を担う。
ダイバーシティ:多様性を認め尊重する
ダイバーシティとは、多様性のこと。性別、年齢、国籍、人種、性的指向、宗教、障がいの有無、価値観、経験、考え方など、あらゆる違いを認め、尊重すること。従業員の多様性を理解し、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体のポテンシャルを高めることを目指す。
インクルージョン:誰もが活躍できる環境づくり
インクルージョンとは、多様性のある人々がそれぞれに能力を発揮できるよう、包容的な環境を作ることを指す。ダイバーシティは「違いを認める」という受動的な概念に対し、インクルージョンは「違いを生かす」という能動的な概念である。社員がそれぞれが持つ能力や個性、経験を活かせる環境を整備することで、社員のエンゲージメントや生産性を向上させる。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリット
人事部門がダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで、以下のようなメリットが期待できる。
1. 人材獲得競争の優位性
- 多様な人材が活躍できる環境をアピールすることで、優秀な人材を獲得しやすくなる。
- 特定の属性に偏らない人材プールから、企業にとって最適な人材を採用できる。
- 従来の採用基準にとらわれず、多様なバックグラウンドを持つ人材を獲得することで、組織に新たな視点やアイデアをもたらす。
2. 従業員エンゲージメントの向上
- 従業員は自分の能力や個性を認められ、尊重されていると感じ、組織への帰属意識が高まる。
- 従業員は多様な意見を共有し、受け入れられる環境の中で、より積極的に仕事に取り組むようになる。
- 従業員は自分の能力を最大限に発揮できると感じ、組織に貢献したいという意欲を持つ。
3. 組織のイノベーション促進
- 多様な視点やアイデアが生まれやすくなり、新たな商品開発やサービス開発、業務改善につながる。
- 多様な人材が協力し、互いに学び合うことで、組織全体の創造性を高める。
- 異文化理解や多様性への理解を深めることで、グローバルな視点での事業展開を促進する。
4. 企業の社会的責任の向上
- 多様性と包容性を重視する企業姿勢を示すことで、社会からの信頼を獲得する。
- 社会に貢献し、持続可能な社会の実現に貢献する。
- 従業員、顧客、取引先など、さまざまなステークホルダーとの関係性を強化する。
人事部門における具体的な取り組み
人事部門がダイバーシティ&インクルージョンを推進するために、以下の具体的な取り組みを行うことが重要である。
1. 採用活動における取り組み
- 採用広告や募集要項で、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを明確に示す。
- 応募書類の選考において、性別、年齢、国籍、出身地などの属性ではなく、能力や経験、ポテンシャルを重視する。
- 面接官の意識改革を行い、多様な人材を受け入れるためのトレーニングを実施する。
- 採用プロセスにおける無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を排除するための対策を講じる。
- 障害者雇用や外国人雇用など、多様な人材の採用を積極的に推進する。
- 多様な人材が活躍できる環境を整備し、定着率の向上を図る。
- 従業員紹介制度を導入し、社外からの多様な人材の獲得を促進する。
2. 人事制度の整備
- 能力や成果に基づいた評価制度を導入し、多様な人材が公平に評価される環境を作る。
- 柔軟な働き方を選択できる制度を導入し、個々の事情に合わせた働き方を支援する。
- 育児休暇、介護休暇、フレックスタイム制、テレワークなど、ワークライフバランスを支援する制度を充実させる。
- 従業員が安心して相談できる相談窓口を設置し、ハラスメント防止対策を実施する。
- 従業員間のコミュニケーションを促進するための研修を実施する。
- 従業員が自分のキャリアプランを立て、成長できるようサポートする制度を導入する。
3. 職場環境の整備
- 誰もが快適に過ごせるユニバーサルデザインのオフィス環境を整備する。
- 多言語対応の環境整備を進め、外国籍の従業員が働きやすい環境を作る。
- 従業員同士の交流を促進するためのイベントやプログラムを企画・実施する。
- 多様な価値観を認め合い、尊重し合う文化を醸成する。
4. 社内教育
- ダイバーシティ&インクルージョンの重要性について、全社員への意識啓蒙を行う。
- 多様性への理解を深めるための研修プログラムを実施する。
- 無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)について学ぶ機会を提供する。
- 多様な人材とコミュニケーションを図るためのスキルを習得する研修を実施する。
- リーダーシップ研修において、ダイバーシティ&インクルージョンを意識したリーダーシップを育成する。
5. 継続的なモニタリングと改善
- 導入した取り組みの効果を定期的に評価し、改善策を検討する。
- 従業員の意見を積極的に聞き取り、改善点や新たなニーズを把握する。
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進状況を社内外に発信する。
ダイバーシティ&インクルージョンを成功させるためのポイント
ダイバーシティ&インクルージョンを成功させるためには、以下のポイントを意識することが重要である。
1. 経営トップのコミットメント
- 経営トップがダイバーシティ&インクルージョンへの強い意志を示し、全社的な取り組みを推進する。
- 経営トップが率先してダイバーシティ&インクルージョンを実践することで、社員の意識改革を促す。
2. 全社員の意識改革
- 従業員一人ひとりがダイバーシティ&インクルージョンを理解し、意識を変える。
- 従業員が積極的に意見を出し合い、より良い職場環境作りに貢献する。
3. 継続的な取り組み
- 一過性の取り組みではなく、継続的に取り組みを続けることが重要。
- 時代や社会の変化に合わせて、取り組みを改善していく。
4. 具体的な目標設定
- 具体的な目標を設定することで、取り組みの進捗状況を把握しやすく、成果を測定できる。
- 目標達成に向けた取り組みを継続することで、組織全体の意識改革を促進する。
5. 測定可能な指標を設定
- 採用、定着率、従業員満足度、イノベーションなど、具体的な指標を設定し、効果を測定する。
- 指標に基づいて、取り組みを評価し、改善していく。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の成功事例
Googleは、ダイバーシティ&インクルージョンを重視する企業として知られている。従業員の多様性を積極的に推進し、あらゆる人材が活躍できる環境づくりに力を入れている。
- 採用活動において、性別、年齢、国籍、出身地などの属性ではなく、能力やポテンシャルを重視する。
- 無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を排除するための対策を講じている。
- 従業員が安心して相談できる相談窓口を設置している。
- 従業員が自分のキャリアプランを立て、成長できるようサポートする制度を導入している。
- 職場環境の整備に力を入れており、誰もが快適に過ごせるユニバーサルデザインのオフィス環境を整備している。
- 全社員への意識啓蒙活動や多様性への理解を深めるための研修プログラムを実施している。
株式会社リクルート
リクルートグループは、「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現」というビジョンのもと、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進に取り組んでいる。
- Indeedでは、従業員主導で、人種、ジェンダー、障がい、世代などの様々なトピックに基づき従業員間の相互連携や支援を行う「インクルージョングループ」を形成している。
- 株式会社リクルートでは、女性従業員のキャリア支援を強化し、28歳前後の若手女性従業員に向けた研修「Career Cafe 28」を実施している。
- LGBTQを始めとするセクシュアル・マイノリティへの理解促進のため、全従業員を対象にeラーニングを実施している。
- 同性パートナーも配偶者として福利厚生を適用するなど、働きやすい環境づくりにも取り組んでいる。
まとめ
人事部門におけるダイバーシティ&インクルージョンは、単なる社会的責任ではなく、企業の競争優位性、従業員エンゲージメント、組織イノベーションを促進する重要な経営戦略である。人材の多様性を認め、尊重し、個々の能力を最大限に引き出すことで、企業は持続的な成長を実現できる。
ダイバーシティ&インクルージョンは、すべての従業員が自分の能力を最大限に発揮し、自分らしく活躍できる環境作りを目指すべきである。人事部門は、多様な人材が活躍できる職場環境を整備し、従業員が成長できる機会を提供することで、企業の競争力強化に貢献する重要な役割を担っている。