目次
はじめに
まず初めに自分はメルカリ及びメルペイをリスペクトしています。
日本発でグローバルに打って出る姿勢には期待していますし、戦略やプロダクトには同じプロダクト開発者として学ぶところが多くあります。
そのため、メルカリの動向は常にチェックしているのですが、最近リリースが発表された「メルペイあと払い」サービスがすごすぎると思ったので調べてみました。
そもそもメルペイとは?
(画像: https://www.merpay.com/)
「メルペイ」とはフリマアプリ「メルカリ」内で利用できる決済サービスおよびそれを提供する会社を指します。
メルカリの子会社であるメルペイが開発しているサービスですが、独立したアプリではなくメルカリアプリ内の1機能として提供されています。
特徴として、
- メルカリの取引で得た売上金をメルカリ内の商品の購入もしくはメルカリと提携している加盟店で利用できる(オンライン/オフライン問わず)
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銀行口座からチャージすることで売上金がなくても決済することができる
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加盟店には全国のコンビニや飲食、家電量販店などが参加している
もはやメルカリ内における単なるポイントの二次利用ではなく、メルカリを中心としてあらゆる領域にそのエコシステムが広がりつつ野心的なプロダクトです。
おそらく国内の決済市場のスタンダードを目指していると思われますが、他の〇〇Payとはアプローチが違うので今後どうなるか楽しみです。
メルペイあと払いはどんなサービス?
では「メルペイあと払い」はどんなサービスなのでしょうか?
元々「メルカリ月イチ払い」というサービスがメルカリ内で提供されていました。
ZOZOのツケ払いと同じようなものです。
要は支払のタイミングを翌月にすることで、今すぐ手元にお金がない人でも商品の購入ができるというものです。
ここまでだったらこれほど騒ぎにはなりません。
では今回のリニューアルでなぜそれほどインパクトがあるのかというと、それは メルカリ以外で決済可能なメルペイであと払いが可能になった ところがポイントです。
今までは 現金がなくてもメルカリ内で購入ができるサービス だったものが、 現金がなくても実社会で消費ができるサービス になったのです。
正確にはメルカリと提携している加盟店に限定されますが、メルカリの提携のスピード感を見ていると電子決済が導入されているほぼ全ての店で使えるようになるのは時間の問題だと思います。
(画像: https://www.merpay.com/)
つまりメルカリからお金を借りてショッピングや飲食をすることができるようになるのです。
街金より金利が高い?
メルペイあと払いの手数料は300円/月で固定だとアナウンスされました。(2019年3月時点)
つまりいくらあと払いを使用しても月に300円は超えないということになります。
とはいえ無限に利用できるわけではなく、メルカリの利用実績によりますが、まずは最高上限50,000円からスタートするそうです。取引実績が低い人はもっと少額になるでしょう。
と、ここで考えてみましょう。
一般的(まとも)な消費者金融で借りた場合、大体年率18%の金利が相場になります。
月に300円ということは年で置き換えた場合、3,600円ということになります。
とすると、年間返済額が18%となるための借入額は、
年間返済額 / 金利 = 借入額
300円 * 12ヶ月 / 0.18 = 20,000円
となり、20,000円をあと払いで利用すると、一般的な消費者金融で借りた場合と同等となると言えます。
言い換えると、 20,000円以上なら消費者金融で借りるよりもメルペイあと払いを利用した方が得 、逆に 20,000円以下なら消費者金融よりも高くつく とも言えます。
とは言え、翌月に支払う仕様だったり、メルカリサービス内での使用に限定されているので、一般的な消費者金融とはニーズもモデルも違うので単純には比較することはできません。
また、メルカリでモノを売って返済するということもできるので、ヒトに貸し付けてモノで返済する新しい質屋 みたいな立ち位置のサービスになるかもしれません。
この新しいモデルが社会に受け入れられるかどうかはこれから試されますが、今までにない革新的なサービスであることは間違いありません。
消費者金融市場を切り崩す?
小額借り入れのニーズは昔から一定数存在します。
もし最大上限の5万円が引き上げられれば、今まで消費者金融で借りていた人が一部流れてくるかもしれません。
もちろん上限が上がると手数料体系も変わると思いますが、新しい信用システムでコストを抑えられるならその分低金利で貸し出せるようになるので、勝算は十分あるでしょう。
特に今までの信用システムでは信用スコアを上げることができなかった(クレジットカードや銀行口座を持てなかった)層に対して強いソリューションになるかもしれません。
消費行動(ビッグデータ)による与信
先ほど、メルカリ内における取引実績によってあと払い可能な上限額が変動するという話をしました。
消費者金融しかりクレジットカードしかり、お金を借す、もしくは立替えるということは、その分信用コストがかかります。
誰にいくらまでなら貸せるのか?
立替えたはいいものの、ドロンされてしまうと回収不可能になってしまうからです。
そのリスクと信用コストにはトレードオフの関係があり、各社が頭を悩ませている問題です。
今までは 職業や年収、身元などから信用度を推測 し、いくらまで貸し出せるかを判断していました。
しかしインターネットの普及に伴い、最近はその人の消費行動データから分析して信用度を算出するという手法が盛んに研究されています。
例えば、その人の購入頻度を見て、きちんと期日までに支払いされていたらその人はこれくらい支払い能力があるだろうという考え方です。
メルペイはそこに メルカリ内における取引実績をみて信用する アプローチを持ち込みました。
どういうアルゴリズムなのかはわかりませんが、取引額や頻度、レビューなどから決定していると思われます。
よく売り、よく買って、正しい行動をすればするほど借入上限が増えるので、メルカリの利益になる行動をするように上手くインセンティブが設計されています。
メルカリ経済圏(エコシステム)の利益に繋がるようにインセンティブ設計がされている ことがこの打ち手のすごさです。
(スライド: メルペイ「後払いサービス」の健全な発展に向けて(第21回 産業構造審議会資料より))
ルールチェンジャーからルールメイカーへ
最近フィンテック(金融×IT)が注目されていますが、逆に何故今までそれほどIT化が進んでいなかったのでしょうか?
考えられる理由として、金融業界自体のテクノロジーに対する適用の遅さ 、もう一つは 国による法整備が追いついていない という点が挙げられます。
特に融資・投資領域においてはクリアすべきルールが多く、スタートアップが容易に参入することは出来ませんでした。
最近になってようやく規制緩和の機運が高まってきたように感じます。
メルカリおよびメルペイも経団連に加入したりと、業界のルール作りに精力的に活動されているようです。
これは公開されている経済産業省とのディスカッション資料の一部ですが、小額の後払い・分割払い事業に関して面白いことを提案しています。
(スライド: メルペイ「後払いサービス」の健全な発展に向けて(第21回 産業構造審議会資料より))
今まで人が定義していた与信判定をAI(データ分析)を用いて代替できないか という提案です。
これはかなり野心的な提案です。もしデータを活用したアルゴリズムによる与信が法律で認められれば、業界に与えるインパクトは相当なものになるでしょう。
また事業環境の整備に関しても提案しています。
法律上、完全ペーパーレスを許容していただけないか。
これもすごいこと言っています笑
もしこれらが実現すれば、今まで人手でやっていた業務が全てIT化され、その分コストが下がり、また最適な融資サービスが受けられるかもしれません。
AIによる与信はプライバシー保護の観点などから賛否があると思いますが、個人的にはメリットの方が大きいと思っています。
AirBnBしかりUberしかり、社会的インパクトのあるサービスは例外なく既存のルールをディスラプト(破壊)します。
そういったサービスが成長すると、今度は 既存のルールを破壊する存在(ルールチェンジャー) から これからのルールを創っていく存在(ルールメイカー) への変化が求められます。
現に検索のGoogle、iPhoneのApple、SNSのFacebookはすでにルールメイカーとして各業界を牽引しています。
規制やルールをどう整備していくか?これができるスタートアップ・ベンチャーは中々いません。
上場しているとはいえ、メルカリもそのステージに立っているということです。
今後の動向に期待です。