人事におけるトレンド:2023年以降の人事戦略の焦点

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人事部門は、企業にとって最も重要な機能の一つであり、常に変化するビジネス環境に適応する必要があります。近年、人材の重要性が高まり、人材戦略は企業の成功を左右する重要な要素となっています。

2023年以降は、従来の日本的雇用慣行から脱却し、人材の多様性や個々の能力を最大限に活かせる新しい人事戦略が求められています。本記事では、人事のトレンドを深掘りし、今後の変化に対応するためのヒントを紹介します。

人事トレンドを理解する:2023-2024年のキーワード

パーソル総合研究所が発表した「人事トレンドワード2023-2024」では、「賃上げ」、「リスキリング」、「人材獲得競争の再激化」の3つのキーワードが注目されています。

1. 賃上げ:止まらない物価高騰への対応

2023年は、政府による賃上げの必要性とインフレ率を超える賃上げに向けた後押しによって、賃上げムードが高まりました。大手企業における賃上げ率は2022年の実績を1.72ポイント上回る3.99%で、これまでのピークであった1993年の3.86%を上回りました。

しかし、実質賃金は前年比マイナスが続き、物価上昇に賃上げが追い付いていない状況です。グローバルな人材獲得競争における待遇面での競争力強化の面でも、まだまだ物足りない賃上げ率となっています。

長時間労働の解消には、職場の管理職の意識改革、非効率な業務プロセスの見直し、取引慣行の改善が欠かせません。長時間労働をなくしていきながら、賃金を上げていくことが、我が国の経済成長に不可欠と考えられています。

2. リスキリング:人材不足解消と競争力強化の鍵

政府は2022年に個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を発表しました。2023年には、厚生労働省が資格学習の費用の補助率を引き上げ、デジタル人材の増加を促進しました。また経済産業省は、リスキリングを経て再就職できた場合に、講座の受講費用などの支援を受けられる制度を導入するなど、2023年は「リスキリング元年」と言えるほど、リスキリングへの関心が高まりました。

生産年齢人口が今後も減り続ける日本にとって、リスキリングは深刻な人材不足の解消のために取り組むべき緊急かつ重要な課題です。

リスキリングを学習機会の提供にとどめることなく、具体的なポストへのキャリア・パスや処遇の提示、配置転換の施策との紐づけが重要となります。

3. 人材獲得競争の再激化:変化への対応力と魅力的な労働環境がカギ

2023年は例年以上に人材獲得競争が激化しました。特に10月に施行された「インボイス制度」に対応するための業務のデジタル化やDX化を推進するニーズが高まり、求人数が増加しました。

社内育成だけでは質量ともに人材確保が追い付かず、外部から採用する人材獲得競争が激化しています。

「人材が不足している」と回答した企業の割合は、正社員で51.4%、非正社員でも4年ぶりに3割を超えました。

現在の日本は、生産年齢人口の減少とともに、デジタル領域で欧米に遅れをとっており「人口減少」と「競争優位産業不在」の二重苦の状態にあります。

企業は求職者とのベストマッチングを図るためにも、人的資本経営に関する取り組み状況を誠実に伝えていくことが求められています。

人事トレンドを捉え、企業が取るべき行動

2023-2024年のトレンドワードから、企業が取るべき行動を以下の3つの視点で解説します。

1. 従業員のエンゲージメントを高める

従業員のエンゲージメントを高めることは、企業の成長に不可欠です。従業員が会社に愛着を持ち、仕事に意欲的に取り組むことで、生産性や創造性を向上させることができます。

エンゲージメントを高めるための具体的な施策として、下記が挙げられます。

  • 従業員の声を積極的に聞き取る: 定期的なアンケートや面談を通して、従業員の意見や不満を把握し、改善策を検討しましょう。
  • 働き方改革を推進: 残業時間の削減、柔軟な勤務体制の導入など、従業員が働きやすい環境作りに取り組みましょう。
  • 従業員同士のコミュニケーションを促進: チームビルディングイベントや交流の機会を設けることで、従業員間の連携を強化しましょう。
  • 成長機会を提供: 研修制度や資格取得支援など、従業員がスキルアップできる機会を提供することで、モチベーション向上に繋げましょう。
  • 従業員エンゲージメントを可視化する: 定期的な調査や分析を通して、従業員エンゲージメントの現状を把握し、改善策を検討しましょう。

2. 人材育成に力を入れる

人材育成は、企業の将来を左右する重要な要素です。従業員の能力開発に投資することで、競争力強化や組織全体の成長に繋げることができます。

人材育成戦略を考える上で重要なのは、下記の2点です。

  • 従業員のキャリアパスを明確にする: 従業員が将来どのようなキャリアを築きたいのかを理解し、個々の目標達成を支援するキャリアパスを設計しましょう。
  • リスキリングを積極的に導入: 時代の変化に対応できる人材育成を行うために、デジタルスキルや最新技術に関する研修プログラムを導入しましょう。
  • 育成プログラムの多様化: 従業員のニーズや能力に応じた、多様な研修プログラムを用意しましょう。
  • OJT (On-the-Job Training) を充実: 実務を通してスキルを習得できるOJTを充実させ、実践的な能力を育成しましょう。
  • 外部研修の活用: 専門性の高いスキル習得や最新知識のインプットには、外部研修を活用しましょう。

3. 人材獲得戦略を強化する

人材獲得競争が激化する中、企業は求職者にとって魅力的な職場環境を提供することが重要です。

人材獲得戦略を強化するための施策として、下記が挙げられます。

  • 採用ブランディングを強化: 企業理念やビジョン、働き方などを明確に発信することで、求職者に魅力的な企業イメージを伝えましょう。
  • 多様な採用チャネルを活用: 従来の求人媒体に加え、SNSや転職サイトなど、多様な採用チャネルを活用することで、より多くの求職者にアプローチしましょう。
  • 採用プロセスを改善: 応募から内定までの期間を短縮したり、面接方法を工夫したりすることで、求職者の満足度を高めましょう。
  • 福利厚生を充実: 従業員が安心して働けるように、充実した福利厚生制度を用意しましょう。
  • ダイバーシティ&インクルージョンを推進: 多様な人材を受け入れる体制を整え、多様な才能を活かせる職場環境を作りましょう。

まとめ

人事のトレンドは常に変化しており、企業は最新の情報に目を向け、柔軟に対応していく必要があります。

2023年以降は、従業員のエンゲージメントを高め、人材育成に力を入れるとともに、人材獲得戦略を強化していくことが、企業の成功に不可欠です。本記事で紹介したポイントを参考に、自社の課題や将来を見据えた人事戦略を構築していきましょう。

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