ビットコインの通貨的価値について考えてみる

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はじめに

最近ビットコインなどの仮想通貨や基盤技術であるブロックチェーンが話題に上がっていますね。

仮想通貨の価値が何十倍も上がったとか、ビッグカメラで支払い開始したとかで世の中的にも認知度が上がってきていると感じています。

ただ実生活での利用はまだまだ途上で、今は投機的な盛り上がりがメインな気がします。
投機対象として注目を浴びるのは仮想通貨の発展にも繋がるので喜ばしいことですが、仮想通貨そのものの本質的な価値についてはあまり理解されていないまま投機商品として扱われているような気がします。

エンジニアとしては、何か仮想通貨関連のサービス出せないかなーと思いつつ、今一度仮想通貨の通貨的な価値を考え直してみたいと思います。

ちなみに仮想通貨の投資や歴史に関しては他にもっと詳しく説明されている記事や書籍があるので説明しません。

初心者が興味持つ取っ掛かりになれば幸いです。

「仮想通貨」じゃなくて「暗号通貨」

世間では「仮想通貨」と呼ばれることが多いですが、ビットコインはブロックチェーンと呼ばれる暗号技術を使ったインフラ上で実現しているものなので、正確に言うと「暗号通貨」の一種です。

仮想通貨だと広義すぎて、サイトやゲーム内で使える独自通貨なども定義に含まれてしまいます。
電子マネーのSuicaなどとも混合されやすいです。

実は暗号通貨と一言で言っても、ビットコイン以外にもたくさんあって(怪しいのも含めて笑)、有名所だとGoogleも出資しているRipple(リップル)や日本発のモナーコイン(MonaCoin)などがあります。
またスマートコントラクトに対応しているEthereumなどもあります。

そもそもビットコインってなに?

教科書的に言うと、「インターネット上で取引・発行が可能な分散型仮想通貨の一種」なんですかね。

うーん、固い。。

この定義だといまいちピンとこない方もいるのではないでしょうか?(少なくても僕はそうでした)

実はビットコインの定義は色々なところで語られているのでそれぞれ定義が異なります。

なのでなるべく理解しやすいように自分の言葉で定義してみます。

ビットコインを使用するユーザの視点で定義するなら、ビットコインは「世界中の人と共通で利用できるデータベース(のようなもの)で取引履歴を管理されたデジタル通貨」と言えます。

厳密にはビットコインのインフラにはP2P※の分散ネットワークで実現されるブロックチェーンという技術が使われているのですが、データを格納する基盤という意味でデータベースのようなものをイメージして下さい。

※P2P: ネットワーク上で個々のコンピュータが直接接続しあう形態

もう少しエンジニア的に言うなら「P2Pで構成される分散ネットワーク上で取引履歴が管理されているデジタル通貨」になるかもしれません。

ポイントは巨大な一つのシステムで管理されているのではなく、「分散ネットワーク」で管理されていることです。またビットコインには実体はなく、取引履歴のみ管理されていることです。

技術的な仕組みは多くの記事で説明されているので調べてみて下さい。

仮想通貨「Bitcoin」とは一体何か、どういう仕組みかが一発で分かるまとめ

Suicaと何が違うの?

暗号通貨の概念を全く知らない人に一言で説明するのは中々難しいです。

金や貨幣と違ってこの世に実際に存在するものではなく、データとしてオンラインで保存されているものをデジタル通貨と呼びます。

例えばECサイトやオンラインゲームなどで独自のポイントやコインをやり取りできますが、これは基本的にそのサービス内に閉じた利用しか管理できません。一般的に仮想通貨がこの定義に入ります。

Suicaなどの電子マネーもかなり一般に普及してきたので、通貨をオンラインで管理することにはかなり理解が広まってきているのではないでしょうか。

ただSuicaなどは実際の円をデータに置き換えているだけなので、円の所有情報をデータベース上で管理しているだけです。

しかもそのデータベースは一企業体が管理しているものなので、他の企業がデータを参照することも更新することも出来ません。
それではその通貨を使える範囲が限られてしまいます。

その通貨圏を外部に広げるためには企業同士がデータ連携する必要がありますが、全ての企業同士がシームレスに連携するのは現実的ではないです。
もし仮に実現できたとして、システムの管理や不具合が起こったときの責任分担をどうするかなどの課題が山積みになるのは目に見えています。

ましてはそれを国を超えて実現しようと考えると気が遠くなります。

技術的なハードルもありますが、政治的なハードルの方が高い問題です。

円やドルの代わりになる?

そもそも円やドルなどの通貨はどうして今の形になっているのでしょうか?
現代の経済活動において当たり前に使われすぎてて考えもしませんでしたが、その成り立ちや本質を考えると、また違った視点でビットコインの価値が見えてきます。

通貨の役割はモノやサービスの価値を適切に測り、あらゆる経済活動を円滑に進めることです。それさえ達成できていれば、別にコインや紙幣という形をしている必要はないのです。
今時点でそれ以上に便利な形がないので今の形に落ち着いているとも言えます。

極論を言えば条件さえ満たせれば芋でもいいわけです笑

通貨として必要な要件は3つあります。

  • 価値を正確(厳密)に測ることができること

そのためには単位が細かければ細かいほどより厳密に価値を定義することが出来ます。
芋5個とかだと通貨として使いづらいです。
ビットコインは、最小単位である1satoshi(0.00000001BTC)まで細かくすることが出来ます。

  • 有限であること

無限に発行できてしまっては通貨の価値が安定しません。発行上限を上手くコントロールする仕組みが必要になります。
ビットコインはアルゴリズムで全体の発行量が決められています。
ビットコインはマイニング(採掘)によって発行されますが、その採掘される量は年々減っていきます。発行上限が決まっているからこそ、需要が高まれば高まるほど価格が上がります。

  • 保存できること

腐ったり、劣化してしまっては通貨の価値が保てなくなってしまいます。なるべく時間的制約を受けないものが適しています。
何年たっても手に入れたときとほぼ変わらない価値を保つものが良いです。(市場的な価値は別として)
その点で言えば、デジタル通貨はデータとして価値が保存されているので、半永久的に劣化しないと言えます。

よく現在の国が発行している通貨は最終的には金に変えられることを価値の根拠に語られることがあります。
金もこれらの要件を満たしているのに加えて、その希少性と美しさから支持されたんじゃないかと思います。

通貨というものの仕組みや本質を考えると中々面白いです。
結局通貨とは人間が経済活動のために勝手に仕組みを決めているだけなので、もっと便利なものがあれば既存のシステムに拘る必要がないことがわかります。

むしろ政府に制限されないビットコインは、反政府主義的な意味で人気があったりします。

ビットコインは人類の夢?

「世界中の人と共通で利用できる通貨」はある意味人類の夢です。

既存のシステムでは上で説明したように実現までのハードルが高く、なかなか届かない夢でした。

そこでビットコインのベースとなっているブロックチェーンという革新的な技術(アイデア)が開発されたことで、もしかしたらその夢が実現できるかもしれない、ということで注目を浴びたのがビットコインだと思っています。

ブロックチェーンはその仕組みが上手くて、ステークホルダー(参加者)に上手くインセンティブを与えることで管理者が不在でも成り立つシステムを構築することに成功しています。

上手いと思っている理由の一つとして、

  • システムの管理を分散化して成立させているところ

    この仕組みのおかげでビットコインは非中央集権と呼ばれたりします。

    通貨の取引情報を分散ネットワーク上に格納するためにはコンピュータによる膨大な計算処理が必要です。その計算を採掘(マイニング)と呼びますが、その採掘を誰でも行えるようにしているのです。
    とはいえ、何のメリットもなければ参加者は集まりません。善意に頼ったシステムは持続しないので。
    そこで採掘者にはインセンティブとして採掘した報酬としてビットコインを受け取ることが出来るようにしています。

    採掘者は膨大な計算に必要なコンピュータと電気代を投資してビットコインを稼ぎます。
    参加者が増えるほどシステムが安定的に維持され、価値が高まります。
    そして価値が高まることによりさらに採掘者が増えるという上手いサイクルを仕組みによって実現しています。

    システムの維持に必要なリソースをオープン化し、インセンティブを与えることでシステムの維持・拡大を実現しているところが画期的なアイデアなのです。

    また、システムを分散ネットワークで構築することにより、例え一部のコンピュータが故障したとしても全体のシステムは維持できるため、システム自体の安定性が高いというメリットもあります。

    もちろんシステムの維持を外部に公開するため、悪意のある第三者は必ず出てきます。しかし、そこを暗号技術を用いることで不正を働くのが限りなく困難な仕組みにしています。
    不正を働くためには、莫大な計算処理が必要になり、不正を働くよりも普通に採掘(マイニング)した方が得になってしまうのです。この発想がとても面白い。

    ブロックチェーンに使われている技術は一つ一つはそれほど目新しいものではありません。むしろその技術の組み合わせによって実現しているゲーミフィケーション的※な発想に革新性があると思っています。

    ※ゲーミフィケーション: 課題の解決に、ゲームデザインの技術やメカニズムを利用すること

そしてもう一つ理由を挙げるとすると、

  • ルールの透明化

    実はビットコインを実現しているシステムのプログラムは全世界に公開されていて、誰でも中身を見ることができます。(理解できるかどうかは別として)

    ソフトウェアの世界ではオープンソースと呼ばれていますが、こうすることによって特定の人達が不正に利益を得ることが出来なくなります。つまり、参加者全員が監査役となってシステム全体の公平性を保つ仕組みを作り上げているのです。

    また、プログラムには発行上限や取引の成立条件に関するアルゴリズムが含まれているため、そのルールを明確に把握することが出来ます。ブラックボックスになってシステムの中で何をやっているのか分からない状態にはなりません。

    この非中央集権的なアプローチが世界中で使用される可能性がある一因とされています。

まとめ

長くなりましたが、まとめるとビットコインの通貨的な価値というのは「世界中の人と共通で利用できる通貨」を実現できる可能性を示したことにあると思います。

とはいえまだまだ解決すべき課題はたくさんあり、未完成なシステムであることは間違いありません。
この先ビットコインが成長していくかも正直わかりません。

どんな技術も一発目から上手くいくわけないので、スクラップアンドビルドしながら少しずつ成長していくような気がします。

しかしビットコインが示したアイデアには多くの可能性があると思っています。
個人的には特定のコミュニティ内で使える通貨を自由に発行できるトークンエコノミーという分野に興味があります。

今回はあまり技術的な内容には踏み込みませんでしたが、機会があればその辺にも触れたいと思います。

専門に研究しているわけではないので内容に誤りもあるかもしれませんが、一視点として捉えて頂ければと思います。

それでは。

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